労働法 科目終了試験(1)労働者と使用者について
労働法 科目終了試験(1)労働者と使用者について
労働関係の当事者である「労働者」および「使用者」とはどのように定義されるか。各法律の趣旨、目的によって一律ではない。
法律は法律自身で適用対象をを明らかにしており、労基法と労組法では労働者の定義が異なる。
労働基準法(労基法)……労働者の労働条件の最低基準を保証する法律
労働組合法(労組法)……労働者の団結体である労働組合のさまざまな活動を保障
1)労働者とは
第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
※賃金……第11条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
雇用・就業形態の違いによってアルバイトや正社員といった名称があるが、これらもすべて労働者となる。労働基準法の適用対象であるかどうかとは関係がない。労基法による最低労働条件が保障される。
委任または請負の形式で働いている人は、形式的には労働契約を結んで働いているわけではないが、雇用されて働く「労働者」と似た働き方をしている人も多い。そこで、労働者の該当性は契約形式ではなく、その労働実態に即して判断すべきとされている。
具体的には下記が判断基準となる。
- 仕事の依頼に諾否の自由があるか
- 仕事の内容ややり方について指揮命令を受けているか
- 働く場所や時間が拘束されているか
- 仕事に対する報酬が賃金の性格をもっているか
■労働組合法(労組法)での「労働者」
第3条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
労働基準法と異なり「使用される」ことは必要ではない。そのため失業者も労働者のうちに含まれる。労働者に該当するかどうかは、労基法の適用と同様(契約形式ではなく就業実態)に判断される。プロ野球選手やオーケストラの楽団員も労組法では労働者に分類される。
具体的には、下記が判断基準となる。
- 就業について諾否の自由がない
- 就業について時間的、場所的、方法的な拘束を受けている
2)使用者とは
■労基法での「使用者」
第10条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
労働基準法での法的責任を履行すべき立場にある者はすべて使用者とされる。つまり、下記が使用者となる。
- 事業主(企業主個人や法人自身)
- 事業の経営担当者(事業全般についての権限をもつ法人の理事や会社役員)
- その他その事業主のために行為をする者(人事その他の労働条件決定や付帯的な指揮権限を持つ人)
※労働基準法では「労働者」に該当する人でも、同時に「使用者」として一定の法的責任が生じる人がいる。
■労組法での「使用者」
労組法には使用者の定期規定がなく、問題領域ごとに使用者を論じる。たとえば下記の場合、不当労働行為制度の目的に照らして、使用者は使用者概念が拡張され、労働契約関係にある者だけでなく、それ以外の者をも含む包括的概念とされる。つまり、労働契約の当事者でなくても、具体的に労働条件を支配・決定できる人も使用者とされる。
第7条
なお、不当労働行為を禁止され責任を負う使用者=その行為が使用者に不当労働行為責任を発生させることになる者、ではない。
例)人事部長が労働組合の活動を妨害する行為をしたときには、部長ではなく使用者が不当労働行為責任を負う。
この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
■労働契約上の使用者もいる
労働契約法での使用者は、下記のように定められている。
第2条の2この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
その他、下記の例は、当該労働契約の当事者ではないが、労働契約上「使用者」とされる例。
- 黙示の労働契約……社外労働者と受け入れ会社との間に労務遂行についての指揮命令関係がある
- 法人格避妊の法理……支配・被支配関係にある親子会社で、子会社の法人格が否定され、親会社が子会社従業員の使用者として認められること
※「使用者」には法的文脈によりいろいろな意味があるので注意!
こちらで勉強しました( ´ ▽ ` )ノ