心理学ほげほげ勉強日記

東京福祉大学の心理学部、通信教育課で学ぶ男のブログです。三十路にしてふたたび大学に通うとは……どこへ向かおうとしているのかはともかく、勉強したことをまとめるです。

労働法 科目終了試験(3)就業規則と不利益変更について

労働法 科目終了試験(3)就業規則と不利益変更について

労働契約は労働者と使用者の合意によって内容が規定される。これに対し就業規則は使用者が定めるもので、労働者の同意を前提とするものではない。では、この就業規則を使用者が改定することによって現に雇用中の労働者の労働条件をいかのように変更できるのだろうか。

 

労働契約の内容や労働条件の多くは、就業規則労働協約といった集団的ルールによって決定される。それに異議がある場合は労使間の取決めにゆだねられることになる。

就業規則を作成・変更するのはあくまで使用者。その使用者が一方的に労働条件を変えてしまわないよう、労基法就業規則についてさまざまな規制をもうけて労働者保護を行っている。たとえば、就業規則の作成・変更につき、当該事業場の過半数組合または労働者の過半数代表の意見を聞く必要があるとしている。だが実際は就業規則で定めた労働条件が労働契約の内容になる。

★提携契約説

就業規則の法的性質は3つある。

  • 法規説 就業規則それ自体に法規範としての効力を認める
  • 契約説 就業規則は労働者と使用者の合意を媒介にして労働契約の内容になるとする
  • 定型契約説 就業規則が労働者に明示され、そこで定められた契約内容=労働条件が合理的である場合には、労働契約上の労働条件は就業規則によるとの労働者の意思が一般的に推定されるとする

最高裁秋北バス事件において、就業規則と労働契約との関係について、就業規則規定が合理的である限り、労働条件は「その就業規則によるという慣習が成立している」と判事して就業規則規定が労働契約を規律することを認めた。つまり定型契約説がとられたことになるが、労働契約の内容は就業規則によって決定されることを法定化したと理解したほうが率直。(ただし、労働契約を締結する際に、労働者が就業規則規定に異議をとなえたり、異なる労働条件を特約したりしない限り)

★最低基準的効力

  •  労基法 労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約の部分を無効とし、無効となった分は労基法の定める労働条件基準によると定めている
  • 労働契約法 上記と同じような表現で就業規則に対し最低基準的効力を認めている

就業規則による労働条件の不利益変更

昨今はリストラの一環として、労働条件の引き下げが行われるケースが増えてきた。労働組合がない、またあったとしても団体交渉による労働協約の締結まで至らなかった場合に、使用者が労働条件を一方的に引き下げる(就業規則の不利益変更を行う)ことがある。これは長年議論が行われているが、いまだ見解の一致が見られない難問である。

就業規則が変わっても労働条件は変わらない

・使用者は事業場の過半数組合、もしくは労働者の過半数代表の意見を聴取し、その意見を添付して労働基準監督署に届け出れば適法に就業規則規定を不利益変更できる。(※労基法違反ではないだけであり、労働契約の内容まで変わるわけではない)

★使用者が労働契約上の労働条件を不利益に変更するには

  •  相手方当事者の同意を得る
  • 契約内容変更に同意しない者を解雇し新たに雇う

上記の理屈でいうと、相手が同意しない限り労働条件の変更は難しい。

 →合理性判断の枠組み(合理性と言う判断枠組みで利益調整的に解決)

 

合理性判断

労働条件の不利益変更が合理的であるなら、労働者の同意がなくとも労働条件が変更されるという考え方。合理的か否かは不利益変更の必要性内容・程度の両面から判断される。不利益変更の必要性が大きく、不利益の程度が小さければ合理的とされ、逆の場合は合理性が否定される。

★社会的相当性(同業他社と比べて水準が低くない等)がある、代償措置が取られている等の場合は合理性が重視される

 

合理性判断の現在

最近では合理的判断の枠組みはさらに厳密化。「制度の合理性」と「適用の合理性」において判断するのが一般的。制度全体として合理性が認められても、労働者に耐えがたい不利益を生じさせるときはその場限りで不利益変更の合理性を否定するというもの。

労使間の利益調整が事案ごとに柔軟に実現できるので実務的に有効。

 

合理性判断の弱点

裁判官のさじ加減により判断が異なる可能性

 

合理的判断枠組みが立法化

労働契約法は「最高裁の合理性判断枠組みを法規定化する」という形で立法的に解決。労働者が反対しているときでも使用者がこの規定にもとづいて一方的に労働条件を変更できるとした。(法律上の根拠を与えて強引に決着をつけた)

 

ただし

労働契約法は、労働契約の内容は労働者と使用者との合意によらなければ変更できないことをあらためて原則として明記

例外として、周知・合理性を要件として使用者が一方的に変更できると定めた

 

 

ベーシック労働法 第5版 (有斐閣アルマ)

ベーシック労働法 第5版 (有斐閣アルマ)

 

 

秋北バス事件

就業規則変更によって、定年制度を改正して主任以上の職の者の定年を55歳に定めたため、定年制度の対象となった労働者が解雇された事件で、新たな就業規則の作成・変更によって、既得権利を奪い労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由としてその適用を拒否することは許されないと解すべきとし、不利益を受ける労働者に対しても、変更後の就業規則の適用を認めた。