心理療法概説 科目終了試験(5)日本で生まれた心理療法について
心理療法概説 科目終了試験(5)日本で生まれた心理療法について
<ポイント>
試験用まとめ
★森田療法
1919年に精神科医、森田正馬によって創始された精神療法。対象は対人恐怖や広場恐怖などの恐怖症、強迫神経症、不安神経症(パニック障害、全般性不安障害)、心気症などの神経症。うつ病にも有効とされる。実は森田正馬先生自身も神経症で長く苦しんだ経験を持ち、そこから考え出された療法なのだとか。
ちなみに、神経症になりやすい性格とは、内向的、内省的、心配性、完全主義、理想主義、頑固、負けず嫌い等がある。
<特徴>
神経症が個人の神経質性格をベースに特有の心理的メカニズムで発症すると考えた点に特徴がある。心の矛盾を「あるがまま」と呼ばれる態度で受け止め、不安や症状を排除しようとせず、そのままにしておける態度をやしなう。治療は生活に必要なことから行動し、建設的に生きることを実践させるというステップで行われる。
<治療の進行>
3か月程度をかけて下記のメニューが行われる。
- 第一期 絶対臥褥(がじょく)期
患者を個室に隔離し、食事・洗面・トイレ以外の活動をさせずに布団で寝ているようにする。 - 第二期 軽作業期
外界に触れさせ軽作業をさせたりする。なおこの時期から主治医との「個人面談」と「日記指導」も行う。 - 第三期 作業期
睡眠時間以外はほとんど何かの活動をしているという生活にする。なお現代では適時休憩をとるように指導するところもある。 - 第四期 - 社会生活準備期
日常生活に戻れるよう社会生活の準備に当てられる。
<森田療法の重要キーワード>
- ありのまま(自然服従)
不安があっても、家事や仕事、勉強など「やるべきこと」を、気分にとらわれることなく、できるだけ建設的に、具体的な日々の営みを行うこと。
単なる「自然体」「何もしない」でもないし、「あきらめ」の姿勢でもない。
神経症患者はつい不安にとらわれてしまいやすいが、気分や感情は、天気と同じように自分でコントロールできるものではない。ただ、時間が経てば自然に落ち着いてくるもの。だから不安な感情や症状はそのままにして、今日すべき仕事や目の前にある家事などをする。これが「ありのまま」である。 - ヒポコンデリー性基調
いたずらに病苦を気にしすぎる精神的基調のこと。 - 精神交互作用
「精神交互作用」とは、ある感覚に過度に注意を集中させると、考えれば考えるほど感覚が一層鋭敏になり、結果として固着してしまう……といったように、注意と感覚がその感覚が拡大される精神過程を示した言葉。森田療法では、神経症の症状を引き起こす仕組みのひとつとされている。いわゆる「注意と感覚の悪循環」。 - 体験的理解
行動を通じて体で理解すること。 - 作業
第二期、第三期に行うもの。日常のなすべきこと。 - 絶対臥褥(がじょく)
外界から遮断された室内で、談話、喫煙、読書、テレビなど気をまぎらすようなことは一切行わず、洗面、食事、トイレ以外はじっと寝ていること。心身の疲労回復と同時に症状や症状に抵抗しない態度を養う。
★内観療法
<内観療法の特徴>
本来は修養法として行われていた吉本伊信の内観法を応用した心理療法。医療現場で用いられるようになったのは1960年代から。母、父、きょうだいなど、自分の身近な人に対する今までの関わりを、
「してもらったこと」
「して返したこと」
「迷惑をかけたこと」
の3テーマにそって繰り返し思い出す。そうすることで自分や他者への理解が深まり、信頼できるようになる。それによって、自己の存在価値・責任を自覚し、社会生活の改善につながると考えられている。
1週間などある程度長い時間をとり、施設などで行われる「集中内観」と、日常生活の中で行う「日常内観」の2つのステージがある。
<内観療法の重要キーワード>
- 身調べ
- 内観の前身となる、浄土真宗系の信仰集団・諦観庵に伝わるもの。断食・断眠・断水などを行った上で自分の行為を振り返り、地獄行きの種が多いか、極楽行きの種が多いかを調べるというもの。秘密性、苦行性を除き、修養法へと改革されることで内観療法となった。
- 集中内観
集中型で行われる内観療法。約1週間治療だけに専念できる期間を作って行われる。仕切られた小部屋で、終日自己の内部観察と分析に集中。模索から葛藤、転換期を経て悟りへ観察・分析が進んでいく。治療者は約1時間ごとに患者に面談を行い、人間関係を振り返らせる。それにより、過去の自分の誤った価値観に気づき、新しい価値観を造り出していく。結果としてものごとの認知の仕方が変わり、心理的問題を克服することができる。 - 日常内観
日常生活の中で、1時間程度と短時間で行われる日常内観療法。自己の内部観察と分析を日常生活の中で継続的に行うことで成果を得ることができる。