精神医学 科目終了試験(3)心身症と神経性障害について
精神医学 科目終了試験(3)心身症と神経性障害について
<ポイント>
- 心身症の概要
- 神経性障害の種類
- 神経性障害の治療
<まとめ>
心身症とは
身体疾患の症状発現や症状の消長にこころの問題の関与が大きい身体疾患の総称。
神経性障害の種類
★恐怖症性不安障害
通常は危険でない、ある明確な状況あるいは対象によってのみ不安が誘発される障害。その状況に入ることを考えただけでも予期不安を生じる。しばし抑うつと合併する。社会恐怖以外の大部分の恐怖症性不安障害は、女性より男性に多く見られる。
★広場恐怖(空間恐怖症)
開放空間や安全な場所に戻ることが困難な場所にいる恐怖。日本では乗り物恐怖であることが多い。最も無力かをもたらしやすく、完全に家にこもってしまう患者もいる(外出恐怖。不登校、出社困難など)。抑うつ症状、強迫症状を呈する場合もある。
★社交(社会)恐怖(社交不安障害)
対人恐怖症に類似。吃音恐怖、赤面恐怖、スピーチ恐怖などの体験から生じる不安障害。軽度であればあがり症、対人緊張症と言われる。自己臭恐怖、視線恐怖、嘔吐恐怖、電話恐怖、発汗恐怖などもある。SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)など薬物投与のみで9割が完治する。
★特異的(個別的)恐怖症
特定の動物への接近、高所、雷、暗闇、閉所、公衆便所での排便、特定の食物の摂取、血液の目撃など特異的な状態に限定してみられる恐怖症。その状況に接するとパニック状態が誘発されることもあるが、恐怖症的な状況への恐れは広場恐怖とは対照的に動揺しない。小児期あるいは成人早期に生じ、治療がなされないと何十年も持続することも。
疾病恐怖の一般的な対象は放射線による病気と性病感染である。治療には薬物療法のほか、認知療法、暴露療法、行動療法など。
満員電車や高速道路など、しばらく逃げ場がない状況で突然動悸、息苦しさ、胸痛、めまい、しびれ、冷や汗などの症状が現れ、このままでは死ぬのではないかという強い恐怖にかられパニック状況に陥る障害である。予期不安や空間恐怖から外出ができなくなることもある。ちなみに森田正馬とフロイトはともにパニック障害の持ち主であり、それぞれ自己治療していく過程で森田療法と精神分析療法を編み出した。
治療は即効性のある抗不安薬を頓用させる。持っているだけでも安心する。恐怖状況に対する暴露は段階をふんで実施していく。
脅迫性障害は下記の2種類。
- 脅迫観念
バカバカしいとわかっていながらある考えが繰り返し浮かんでくる - 脅迫行為
その行為を繰り返ししないと気が済まない。
不潔恐怖→洗浄脅迫など、一種の儀式行為を伴う。確認脅迫も多く、ガス栓から計算ミス、交通安全等に関して繰り返し確認を行って日常生活に影響を及ぼす。
発症は通常小児期か成人早期。著しい抑うつ症状なしに慢性化しがち。
★重度ストレス反応および適応障害
生活上の激しいストレスへの反応、生活上の出来事や環境の変化に対する不適応として起こる障害。
- 急性ストレス反応
直ちに激しい全般性不安を中心とした精神症状を起こし速やかに回復するもの。発生と重篤度は個人の脆弱性と対処能力に関連。その出来事から数分以内にパニック不安の自律神経徴候(頻脈、発汗、紅潮)が出現し、2〜3日以内(しばし数時間以内)に消失する。そのエピソードの部分的あるいは完全な健忘を認めることがある。 - 心的外傷後ストレス障害
生死に関わる出来事など、ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような出来事あるいは状況に対する、遅延した反応として生ずる。ある種の無感覚、情動平板化(情動鈍麻)、他人からの離脱、周囲への鈍感さ、アンヘドニア(快楽喪失)、外傷を想起させる活動や状況の回避が持続し、侵入的回想(フラッシュバック)を起こす。
外傷後、数週から数ヶ月にわたる潜伏期間(ただし6ヶ月を超えることはまれ)を経て発症。治療には「自分は一人ではない」という安心感、安全感を取り戻させることが第一歩。個人精神療法だけでなく不安に対しての支持・支援体制が不可欠。 - 適応障害
心理的・社会的ストレスに対する不適応反応。原因は生活上の変化がある。がんなど生命的危機のある疾患への罹患、入学、職場環境の変化、退職、移転、死別、喪失体験など。発症の危険性と症状の形成には個人的素質と脆弱性が関連するが、これらのイベントがなければ生起はしない。行為障害が特に青年期において生じることがある。小児の場合は退行現象(夜尿症、幼稚な話し方、指しゃぶりなど)が症状パターンのひとつである。
治療は精神療法のほか、ストレッサーに対する適応力と抵抗力をつける治療が行われる。難しい場合はストレッサーから離れる等の環境庁製も必要。薬物療法は、対症療法的に抗うつ薬や抗不安薬を使用する。