心理学ほげほげ勉強日記

東京福祉大学の心理学部、通信教育課で学ぶ男のブログです。三十路にしてふたたび大学に通うとは……どこへ向かおうとしているのかはともかく、勉強したことをまとめるです。

【メモ】精神疾患の名称変更

精神疾患の名称が新しいものになるらしい。精神分裂病統合失調症として浸透するまでにずいぶん時間がかかっているが、良いことだと思う。

たしかに、ADHDや性同一障害に関しては、もともとの英単語の解釈をしたとき「障害」って言葉は言い過ぎということを、何かの授業で聞いたことを覚えている。精神医学だったかな? 正確な訳がされたほうがいいよね。

 

「障害」を「症」に 精神疾患の新名称公表 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 日本精神神経学会は28日、米国で昨年策定された精神疾患の新診断基準「DSM-5」で示された病名の日本語訳を公表した。子供や不安に関する疾患では「障害」を「症」に改めるなど、差別意識を生まないよう配慮した。

 主な例では「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は「注意欠如・多動症」に、「性同一性障害」は「性別違和」に変更。「アスペルガー症候群」は単独の疾患としての区分はなくなり、「自閉スペクトラム症」に統合された。

 医療現場では旧版の「DSM-4」などを診断に使い続ける医師もおり、当面は病名が混在する可能性もあるが、学会では「徐々に浸透していくことを期待している」としている。 

 

「性別違和」の人の著作はいろいろあるけど、椿姫彩菜さんの本「わたし、男子校出身です」の冒頭にはガツンと頭を打たれた気がした。自分の名前すら、今は公表したくない気持ちがあるということ。まあ身バレして興味本位に男性だった頃の自分を探られるがイヤ、という話でもあると思うんだけど、ひらがなでしか元の自分の名前を出したくない。そういう気持ちは、あまり表に出てくることはないと思うのだけど、こうした症状を持っている人の気持ちを理解する上で大事なのだろうなあと思った。 

わたし、男子校出身です。

わたし、男子校出身です。

 

 もう一人、能町みね子さんも好きです。この方は最近、顔出しでの活動も始められましたね。検索すると画像が見つかります。この方の場合、無理をしていない感じ(内面的にはいろいろあると思うのだけど)が、見ていていいなと思います。

 

オカマだけどOLやってます。完全版 (文春文庫)

オカマだけどOLやってます。完全版 (文春文庫)

 

 この方の本で、なんと性器を作るところを解説してあるくだりがあるんだけど、「いたた……」と思ったのはここだけの話。大変です。

 

ご自身がADHDであったことを公表した方では、精神科医の星野仁彦さんの本が勉強になりました。特に下記の本は、大人になってから発達障害がわかった方のために、今すぐ使える実践法まで書いてあって本当に参考になります。

こういう誤解を受けやすいのか……という意味でも勉強になります。きっと受容する意味では、読んでおいたほうが良いと思います。会社で、うけもった部下がちょっと変だなと思ったことがある人とかにもお勧めです。すべての人にとってより良く生きられる社会にしていきたいですね。

 

発達障害に気づかない大人たち<職場編>(祥伝社新書237)

発達障害に気づかない大人たち<職場編>(祥伝社新書237)

 

 

 最初のはこちらですね。こちらも良かったです。

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

 

 

 

【メモ】死んで生き返った人の脳のしくみ

「死んで生き返りましたれぽ」というマンガを読んだ。

過労がたたって高血糖昏睡、糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、横紋筋融解症、敗血症、肺炎、栄養失調、などが同時に起こって倒れ、奇跡的な回復後も脳浮腫により失明、記憶喪失、精神障害が現れた人。

この人の、回復期の認知が非常に興味深かった。四角いものが全部同じに見えるとか、体は動かせず声も出せないのに周りの人が言うことは聞こえていて記憶もしている、とか。知覚心理学とかやってると、脳っていまいち理解しにくい難しいものと思えてしまうんだけど、脳はほんとうに不思議だ。

死んで生き返りましたれぽ、の人 - NAVER まとめ

ご本人が知的な人であるだけに、表現も克明で脳の働きについても知っておられるご様子。なので非常に勉強になった。

 

最新脳科学で読み解く 脳のしくみ

最新脳科学で読み解く 脳のしくみ

 

 

しかし、本当に恐ろしい話だ。僕はまあわりと健康なほうなので、病院にはめったに行かない。でも調子が悪くなったら行くべきなのだ、と強く思った。

精神医学 科目終了試験(5)地域精神医療について

精神医学 科目終了試験(5)地域精神医療について

 

<ポイント>

地域精神科医療の展開について概要を理解する。

 

<まとめ>

日本の地域性新医療

日本の近代精神科医療は100年以上の歴史があるが、75年前は私宅監置(いわゆる座敷牢)で、実質的には患者を治療するよりも隔離しておくにとどまっている状態であった。

1950年、精神衛生法の制定により私宅監置が廃止される。

1960年代、民間の精神科病院が全国各地に解説される。ただしその中身に問題があるとしたのがWHOのクラーク博士だった。クラーク勧告では下記の点が指摘された。

この流れに加え、薬物療法が発展してきたことにより、日本の精神科医療は地域ケアへと流れていくことになる。また、1984年のうつのみや病因事件など、精神病院で相次いでスキャンダルが発覚したことが国際的に大きく批判されたことも法改正を後押しした。政府は精神衛生法を37年ぶりに改正し、精神保健法と改めた。また、主たる目的として「国民が精神障害者の社会復帰を支援することである」と明記した。社会復帰施設も建設され始める。その後1995年、福祉の視点も盛り込む形で「精神保健および精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」と改称された。

 

海外の地域精神科医療

地域精神科医療の源流は18世紀フランスのピネルである。ピネルは精神障害者を鎖から開放し、人間として扱った。ただし有効な治療法がなかった時代、医療と呼ぶような動向はなかった。

真の地域精神科医療への扉が開かれたのは、アメリカのピアーズが「わが魂にあうまで」を出版してからである。同書で州立精神科病院の非人間的な処遇が明らかにされてからは精神障害者の権利に対する公権の責任論がもちあがり、1955年にMental Study Actが成立した。その他イギリスやフランスでも、こうした改革が進められていく。

 

具体的な地域移行

1993〜2003 「障害者対策に関する新長期計画」等に基づく施策の推進により進展がはかられてきた。

1993年 障害者基本法が成立。精神障害者知的障害者身体障害者と同等に、障害者として位置づけられた。

社会復帰施設の設置・運営の中心になったのは民間の精神科病院である。これらの病院は日本精神科病院協会を組織し、精神科医療を主導。社会復帰施設、精神障害者グループホーム、入所型施設などを運営している。

1970年代より試みられていた精神科デイケアは、1990年代に急速に普及。病院だけでなくクリニックでも増加。デイケア治療は精神科専門病院で最も盛んであり、クリニックでも増えてきている。ただし公立の施設で少ないことも特徴である。

地域リハビリテーション実践の場は精神障害者小規模作業所である。第一号は1976年。以降30年以上にわたって増え続け、精神障害者が地域で過ごして仕事を持つことを支援している。ただしこれらは精神保健福祉法によらない無認可の小規模作業所であり、精神障害者が国内に10万人以上いるという推計からすると少な過ぎるとする指摘もある。1999年、法改正が行われて無認可小規模作業所を法定の小規模通所授産施設n変更できるようになったが、数はまだまだ少ない。

ただ、社会復帰施策が法定されて20年以上経ってもなお、社会復帰施設の整備状況はまだ十分とは言えない。理由は下記が考えられる。

  1. 補助金制度の仕組み。法人も負担を強いられる構造にある。
  2. 精神科病院の問題。収容主義に慣れすぎてしまっていて、こうした施設の必要性を認識できていない。
  3. 国民の中にある心の障壁。精神障害者を自分たちの生活圏から排除しようというスティグマが根強くある。

差別に対する取り組みは、精神病の改称にも見ることができる。「精神分裂病」は「統合失調症」となり、「痴呆症」は「認知症」となった。

日本でドラスティックに精神科領域が地域ケアに変換していかない理由(仙波恒雄による)

  1. 地域社会の未成熟
    総論賛成・各論反対の社会性(偏見)、精神科病院の孤立性支援の欠如
  2. 入居型施設の著しい不足と利用のしづらさ
    現在の利用年限・対象者の条件、他の障害者福祉に比べ希薄な職員配置と低い運営費補助
  3. 病床転換を図る経済的インセンティブの欠如
    精神科医療費がきわめて低く責任ある運営が困難、外国施設なみの価額の保障がない、社会復帰施設運営者が自立的に可能な補助費体系の欠落、施設運営に病院運営資金を導入せざるをえないこと
  4. 地域転換政策の欠如
    民間病院が8割を担う精神科医療体制である現状に鑑み、病床削減を勧めるにあたり残存病床の診療報酬を底上げして原資とする保障の必要性。
精神医学―精神疾患とその治療 (改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー)

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精神医学 科目終了試験(6)向精神薬について

精神医学 科目終了試験(6)向精神薬について

<ポイント>

定義と種類、注意事項などについて理解する。

 

<まとめ>

向精神薬とは

脳に作用して、特に精神機能になんらかの影響を及ぼす薬物の総称。精神障害に対する治療薬や精神異常発現薬のほか、広義には麻酔薬やアルコールなどの嗜好品も向精神薬に含まれる。

向精神薬の登場により、精神障害の治療やリハビリテーションは画期的に進展を遂げた。また作用機序を手かが利として、精神疾患のしくみについての研究が進んでいる。

 

向精神薬の歴史

現在の向精神薬の原型は1950年代に発見され、その後多数の薬剤が開発され続けている。

1952年 近代精神科薬物療法の幕開け
フランスのドレイとデニカーが、クロルプロマジン統合失調症に対して、催眠作用ではなく精神病症状の治療効果を持つことを発見した。

1954年
デンマークのスコーが、1949年に発見されていた炭酸リチウムの抗躁作用を再発見した。

1957年
スイスのクーンが、イミプラミン塩酸塩の抗うつ効果を報告した。またプロルジアゼポキシドが抗不安薬のメプロバメートと同じ作用を持つことを見いだした。

1958年
ベルギーヤンセンが、抗精神病作用を持つハロペリドールを開発した。

(以下、現在に至るまでさまざまな薬が開発されている)

 

向精神薬の種類

※強力精神安定薬(メジャートランキライザー)や緩和精神安定薬(マイナートランキライザー)は両者の薬理作用が著しく異なる一方で名称から誤解を与えやすいため、強力精神安定薬(メジャートランキライザー)は抗精神病薬、緩和精神安定薬(マイナートランキライザー)は抗不安薬と呼ばれるようになってきている。

 

薬物療法における注意事項

  1. 説明と同意(インフォームドコンセント
    患者の中には「薬に頼っていてはいけない」と自己判断で服薬を中止することが少なくない。アドヒアランス(薬物治療の継続性)を上げるためには、診断を行うとともに、薬物の必要性、効果、副作用について説明する必要がある。家族への説明も重要である。家族へ疾患や薬物、治療法などの説明を行うことは、心理教育的家族療法として重視されている。
  2. 副作用への対応
    薬物療法においては、軽度の副作用よりも主作用(薬本来の目的である作用)を重視すべきである。初期の副作用には次第に慣れ(耐性)ができてくることも少なくないため、患者には副作用であることを伝えて適切に対処する必要がある。
  3. 高齢者への与薬量
    薬の代謝は、年齢が上がるにつれて遅くなる傾向がある。そのため、高齢者は若者よりも薬に対する反応や副作用が強く現れやすい。半減期の長い抗不安薬の場合、覚醒度の低下から認知症のような状態になることもあるので注意が必要である。高齢者には通常容量の半分くらいの投薬を目安とする。
  4. 薬剤血中濃度モニタリング
    薬剤血中濃度モニタリングとは、薬剤の血中濃度を測定して個人の状態にふさわしい容量を決定する方法である。薬の代謝はかなりの個人差があり、同じ投与量でも血中濃度が人によって異なることから、血中濃度が薬効発現の指標となっている薬や、安全域が狭い(治療域と中毒域が接近している)薬などにおいてはモニタリングが必要となる。(フェニトイン、バルプロ酸ナトリウムなどの抗てんかん薬、炭酸リチウムなど)
    ただし血中濃度はあくまで参考値なので、臨床的に効果があれば低値でもよい。

 

精神医学 科目終了試験(3)心身症と神経性障害について

精神医学 科目終了試験(3)心身症と神経性障害について

<ポイント>

  1. 心身症の概要
  2. 神経性障害の種類
  3. 神経性障害の治療

 

<まとめ>

心身症とは

身体疾患の症状発現や症状の消長にこころの問題の関与が大きい身体疾患の総称。

 

神経性障害の種類

★恐怖症性不安障害

通常は危険でない、ある明確な状況あるいは対象によってのみ不安が誘発される障害。その状況に入ることを考えただけでも予期不安を生じる。しばし抑うつと合併する。社会恐怖以外の大部分の恐怖症性不安障害は、女性より男性に多く見られる。

 

★広場恐怖(空間恐怖症)

開放空間や安全な場所に戻ることが困難な場所にいる恐怖。日本では乗り物恐怖であることが多い。最も無力かをもたらしやすく、完全に家にこもってしまう患者もいる(外出恐怖。不登校、出社困難など)。抑うつ症状、強迫症状を呈する場合もある。

 

★社交(社会)恐怖(社交不安障害)

対人恐怖症に類似。吃音恐怖、赤面恐怖、スピーチ恐怖などの体験から生じる不安障害。軽度であればあがり症、対人緊張症と言われる。自己臭恐怖、視線恐怖、嘔吐恐怖、電話恐怖、発汗恐怖などもある。SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)など薬物投与のみで9割が完治する。

 

★特異的(個別的)恐怖症

特定の動物への接近、高所、雷、暗闇、閉所、公衆便所での排便、特定の食物の摂取、血液の目撃など特異的な状態に限定してみられる恐怖症。その状況に接するとパニック状態が誘発されることもあるが、恐怖症的な状況への恐れは広場恐怖とは対照的に動揺しない。小児期あるいは成人早期に生じ、治療がなされないと何十年も持続することも。

疾病恐怖の一般的な対象は放射線による病気と性病感染である。治療には薬物療法のほか、認知療法、暴露療法、行動療法など。

 

パニック障害

満員電車や高速道路など、しばらく逃げ場がない状況で突然動悸、息苦しさ、胸痛、めまい、しびれ、冷や汗などの症状が現れ、このままでは死ぬのではないかという強い恐怖にかられパニック状況に陥る障害である。予期不安や空間恐怖から外出ができなくなることもある。ちなみに森田正馬フロイトはともにパニック障害の持ち主であり、それぞれ自己治療していく過程で森田療法精神分析療法を編み出した。

治療は即効性のある抗不安薬を頓用させる。持っているだけでも安心する。恐怖状況に対する暴露は段階をふんで実施していく。

 

強迫性障害

脅迫性障害は下記の2種類。

  • 脅迫観念
    バカバカしいとわかっていながらある考えが繰り返し浮かんでくる
  • 脅迫行為
    その行為を繰り返ししないと気が済まない。

不潔恐怖→洗浄脅迫など、一種の儀式行為を伴う。確認脅迫も多く、ガス栓から計算ミス、交通安全等に関して繰り返し確認を行って日常生活に影響を及ぼす。

発症は通常小児期か成人早期。著しい抑うつ症状なしに慢性化しがち。

治療は薬物療法認知行動療法を併用する。

 

★重度ストレス反応および適応障害

生活上の激しいストレスへの反応、生活上の出来事や環境の変化に対する不適応として起こる障害。

  • 急性ストレス反応
    直ちに激しい全般性不安を中心とした精神症状を起こし速やかに回復するもの。発生と重篤度は個人の脆弱性と対処能力に関連。その出来事から数分以内にパニック不安の自律神経徴候(頻脈、発汗、紅潮)が出現し、2〜3日以内(しばし数時間以内)に消失する。そのエピソードの部分的あるいは完全な健忘を認めることがある。
  • 心的外傷後ストレス障害
    生死に関わる出来事など、ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような出来事あるいは状況に対する、遅延した反応として生ずる。ある種の無感覚、情動平板化(情動鈍麻)、他人からの離脱、周囲への鈍感さ、アンヘドニア(快楽喪失)、外傷を想起させる活動や状況の回避が持続し、侵入的回想(フラッシュバック)を起こす。
    外傷後、数週から数ヶ月にわたる潜伏期間(ただし6ヶ月を超えることはまれ)を経て発症。治療には「自分は一人ではない」という安心感、安全感を取り戻させることが第一歩。個人精神療法だけでなく不安に対しての支持・支援体制が不可欠。
  • 適応障害
    心理的・社会的ストレスに対する不適応反応。原因は生活上の変化がある。がんなど生命的危機のある疾患への罹患、入学、職場環境の変化、退職、移転、死別、喪失体験など。発症の危険性と症状の形成には個人的素質と脆弱性が関連するが、これらのイベントがなければ生起はしない。行為障害が特に青年期において生じることがある。小児の場合は退行現象(夜尿症、幼稚な話し方、指しゃぶりなど)が症状パターンのひとつである。
    治療は精神療法のほか、ストレッサーに対する適応力と抵抗力をつける治療が行われる。難しい場合はストレッサーから離れる等の環境庁製も必要。薬物療法は、対症療法的に抗うつ薬抗不安薬を使用する。

 

 

精神医学 科目終了試験(2)気分(感情)障害について

精神医学 科目終了試験(2)気分(感情)障害について

<ポイント>

  1. 症状
  2. 病型と分類
  3. 病因
  4. 治療
  5. 患者に接するときの注意点

 

<まとめ>

気分(感情)障害とは
二大精神病といえば統合失調症躁鬱病躁鬱病クレペリンによって疾患概念が確立されたが、その後「感情障害」→「気分障害」と名称が変化した。

 

統合失調症と異なる点

★種類

  • 双極性→うつ病相と躁病相が繰り返される
  • 単極性→うつ病相のみからなる

症状

基本的には感情(気分)の障害。これに思考障害、意欲・行動の障害、身体症状が伴う。症状の理解はうつ病相と躁病相に分けて行う。それぞれ「感情」「思考」「欲動」「身体症状」に分類するのが一般的。躁病相に比べてうつ病相のほうが回数が多い。

 

うつ病

  1. 感情
    抑うつ気分、希死念慮。朝のうちに強く夕方から軽減する。
  2. 思考
    ・思考抑制(考えが進まない、思い浮かばない)
    罪業妄想(取り返しのつかない罪を犯した)
    ・貧困妄想(金がなくなり生きて行けない)
    ・心気妄想(不治の病にかかった)
  3. 欲動
    精神運動停止の様相を呈する。意欲が低下し、動作が緩慢になり、身の回りのことすら面倒に。
  4. 身体症状
    消化器症状、不眠、早期覚醒などさまざまな不調。身体的に原因のないものには軽症のうつ病患者が含まれることがあり、仮面うつ病と呼ばれる。

★躁病相

  1. 感情
    爽快感に溢れ楽天的。自己評価は高く尊大な態度。周囲に対し怒りっぽくなる。
  2. 思考
    観念奔逸(新しい観念が次々とわき起こり、多弁であるが内容は散漫)がある。一つのことに集中していられない。誇大妄想を持つが、統合失調症のような奇怪な妄想ではない。
  3. 欲動
    多動で落ち着きがない。行為心迫(思いついたことを即座に行動に移す)がみられる。精神運動興奮の状態に陥り行動がまとまらなくなる。金銭面、性的側面でも過剰な行動をとる。社会的な逸脱行動。
  4. 身体症状
    不眠があっても苦痛ではない。自覚的には身体が軽く疲れを知らない状態。

 

病型と分類
基本は単極型と双極型。

病因
解明されていないが、内因性の病気と考えられている。下記の要素が関連し合って発症するとされている。

  • なんらかの脳の機能的障害→病気になりやすさを形成
  • 遺伝素因もなりやすさの一部である、
  • 病前性格もなりやすさの一部に関連する。
  • 上記に加え精神的ストレスあるいは身体疾患など身体面でのストレスが加わると発症すると考えられている。

発病年齢が遅いほど病相期間は長い傾向にある。

 

治療

薬物療法が行われる。抗うつ薬や抗躁薬がある。

 

患者に接するときの注意点
★躁病患者に接するとき

  • 患者は尊大で傲慢に振る舞うが、勢いに巻き込まれて怒ったりせず冷静に接して治療関係を維持すること。
  • 思慮を欠いた行動や社会的な逸脱が見られる場合は入院を考慮する。
  • 患者は病識がないため精神科への入院を強く拒否することが多い。
  • 躁状態は短期間で鎮静するので、軽快後に患者の自尊心を傷つけないよう注意する。

鬱病患者に接するときの注意点

うつ病に関して理解させることが必要。

患者に対して

  • 休養をとることが回復のためには最良の方法であると告げる
  • 離婚や辞職を考える人も多いが、重大な判断は治った後まで延期するよう指導する。
  • 社会復帰を急ぐ患者も多いが、社会復帰にはリハビリテーション期間が必要であり、段階的に進めるようにする。薬物療法は再発予防のため回復後もしばらく続ける。
  • 自殺しないことを約束させる。

家族に対しては、以下のことを説明する。

  • 患者は怠けているわけではないこと
  • 励ましは患者の自責感を強めるだけなので避けること
  • 気晴らしにと称して本人が気乗りしない活動を強制するのは禁物であること

 

 

精神医学 科目終了試験(4)てんかんについて

精神医学 科目終了試験(4)てんかんについて

<ポイント>

  1. 概念
  2. 分類
  3. 治療

 

概念
種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な発射から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床並びに検査所見を伴うもの(WHOの定義)

 

診断の契機はけいれん発作が多い。発作症状はさまざまだが(発作の生じる部位、広がり方による)けいれん、意識障害、自動症など。

 

★自動症とは

意識混濁時、無目的にある動作を自動的に繰り返すもの。発作の焦点は側頭葉にあることが多い。

  • 食行動自動症(舌なめずり、もぐもぐ)
  • 表情性自動症(不安や恐怖の表情を示す)
  • 身振り自動症(体の一部に触ったりボタンを外したりする)

 

てんかんの分類

国際抗てんかん連盟による分類が用いられている。


★特発性てんかん原発てんかん、真性てんかん)病因不明

 

★症候性てんかん(続発性てんかん)器質性、代謝性など病因が明らか

 −狭義の症候性てんかん(脳腫瘍や低血糖など進行中の疾患のために発作が出る)

 −残遺てんかん脳梗塞や頭部外傷など過去に罹患した脳障害が治癒した後に発作が出る) 

 

※大脳ニューロンの過剰な発射に由来しない状況関連発作は、通常はてんかんから除外される。

 

症状の分類
★部分発作
臨床症状および脳波所見が一側大脳半球に限局して始まる。意識滅損のない発作が単純部分発作、意識滅損のある発作が複雑部分発作。

  1. 単純部分発作
    身体の一部の運動症状、知覚症状、自律神経症状あるいは精神症状のみを示す発作。運動症状を示す場合、一側の上肢あるいは下肢などを律動的に震わせるなど身体の一部に限局したけいれん。しびれ感を感じる体性感覚発作や視覚・聴覚・味覚などの症状が発作性に生じる特殊感覚発作もある。自律神経症状を示す場合は頭痛発作、悪心や腹痛を生じる胃腸発作、尿失禁発作などがある。精神症状を示す発作の場合は強制思考や感情発作など。
  2. 複雑部分発作
    意識障害のあと健忘が残る発作。「精神運動発作」と呼ばれるものは複雑部分発作の代表的な症状で、意識障害の後に自動症が出現する。
  3. 部分発作から全般性強直。間代発作へ移行する発作

★全般発作
発作開始時から両側大脳半球が障害されて生じるもので、けいれん発作を伴うものと伴わないものがある。

  • 欠神(けっしん)
  • ミオクロニー
  • 間代
  • 強直・間代
  • 脱力発作

最も頻度が高いものは強直・間代性発作。大発作とも呼ばれる。突然の意識障害→強直けいれん(四肢体幹が強く突っ張る)→間代けいれん(四肢体幹を律動的に震わせる)。持続時間は1分程度。

発作開始時に叫び声をあげたり、転倒して頭を打ったり、舌を噛んだりすることもある。

 

てんかん(症候群)の分類

  • 局在関連てんかん
    特発性、症候性、潜因性がある。
  • 全般てんかん
    特発性、潜因性または症候性、症候性に分類される。
  • 未決定てんかん

 

治療

  • 生活リズムの管理
    →過労、睡眠不足、飲酒などで誘発されることがあるため
  • ストレスマネジメント
    →感情・情動刺激により誘発されることがあるため
  • 合併する精神症状
    →心理教育、認知行動療法
  • 薬物療法
    →抗てんかん薬(抗けいれん薬)主体

 

 

精神医学―精神疾患とその治療 (改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー)

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