労働法 科目終了試験(4) 賃金について
労働法 科目終了試験(4) 賃金について
<ポイント>
賃金とはなにか。また賃金支払いについて労働法令はどのような規制をしているだろうか。
賃金とは
仕事をすることで得られるお金には、賃金と賃金でないものがある。賃金の条件は2つ。
①労働の対償である
下記の場合は賃金ではない。
- 使用者が任意で恩恵的に支払う給付(結婚祝い金など)
- 福利厚生としての給付(保養施設の共同利用施設など)
- 業務のための企業施設や費用(出張旅費など)
※労働協約ないし就業規則の規定で支給の有無や条件が明確にされている場合は賃金にあたる。
②使用者が支払うこと
よってチップは賃金ではない。
●賃金のしくみ
中心となる基本給は時間や日、月、年などを単位とした計算で決められる。日給で計算して月単位で支払う日給月給制、1年単位で計算する年俸制もある。出来高給労働の一定額を保障給として支払うことが義務づけられている。
●賃金の中身
月例賃金と特別の賃金がある。
- 月例賃金…毎月受けとる賃金
└所定内賃金(基本給と各種手当)
└所定外賃金(時間外手当、休日手当)
- 特別の賃金
1ヶ月より長い算出機関によって定期的あるいは不定期に支払われる賃金。ボーナスや退職金など。当事者の合意で至急条件が明確にされることによって使用者に支払い義務が生じ、賃金の一環として労基法などの適用を受ける。
ボーナス費が翌週だったのに辞めてしまった、というケースでは、支給日在籍要件がある場合、規定の基準が合理的かつ明確である限り払わなくても違法ではないというのが判例の立場。整理解雇のように辞める日が使用者都合で決まってしまう場合は在籍要件の適用の妥当性が問題になる。
退職金の場合は、自己都合退職と会社都合退職に分けられ、後者の場合は退職金額が高く設定される。協業関係にある同業他社に再就職した場合、協業避止義務違反で退職金が減額されることもある。懲戒解雇飲場合は退職金を支給しないと定めることもある。
●賃金の決められ方
日本では年齢や学歴といった属人的要素、勤続年数という年功的要素が賃金に大きく作用していた。ただ昨今は大きく変化し、年功賃金から成果主義賃金に移行しつつある。ただし純粋な成果主義をとるケースはまだ少なく、年功的要素も加味した日本型が主流。
賃金の決め方は年単位。また目標管理制度などにより、成績評価と連動して賃金額が決定される。
★成果主義賃金の導入で注意すべきこと
- 導入には就業規則への記載が必要
- 導入が合理的で高度に導入必要性があると認められることが必要
- 労使交渉などの手続きが妥当か
- 不利益を緩和しうる代償措置がとられているか
★成果主義賃金制度の運用で注意すべきこと
・労働者の納得を得られるよう公正な評価をすること
→紛争解決のシステムがあるとよい
●賃金の額のルール
賃金の最低基準は最低賃金法により定められている。
最低賃金は審議会方式により決定される。中心となるのは地域別最低賃金。特定最低賃金は労使からの申し出で審議。改訂されるもので地域別最低賃金よりも上で設定される。
●賃金支払いの4原則
- 通貨払の原則(口座振込は例外)
- 直接払の原則
- 全額払の原則
- 毎月1回以上・定期日払の原則
●倒産と賃金
賃金の支払いの確保等に関する法律(賃確法)により一定の要件のもとで労働者の請求にもとづき、退職日の6ヶ月前からの賃金と退職金の未払い分の8割相当額を政府が立替払いすることになっている。
●休むことと賃金
- ノーワーク・ノーペイの原則
- 休んでも賃金がもらえるのは有休
- 資材不達や操業停止、災害等で休業になる場合は労働者の負担になり、賃金請求権はない(危険負担の法理)。使用者に責任がある場合は使用者が負担。
●休業手当
経営上の障害を含むなど不可抗力の場合をのぞくほとんどすべての事由が含まれる