心理療法概説 科目終了試験(1)心理療法の進め方について
心理療法概説 科目終了試験(1)心理療法の進め方について
<ポイント>
下記についておさえる。
心理療法の定義
人間関係(ラポール)
重要な新しい経験
共感的・受容的態度
心理的距離
スーパービジョン
場面構成(治療構造)
時間の制限
心理療法の流れ(初回面接、中期、終結)
<まとめ>
心理療法の定義
心理療法とは
→心理的援助の理論と技術に習熟したセラピストが心理面での問題に直面しているクライアントに対して、面接によってその問題解決を援助する営み。もともとはフロイトによって、当初は神経症のクライエントを対象に始められた。その後、ロジャーズがクライエント中心療法を提唱するなど、さまざまな理論が生み出され、症状の程度から年齢まで幅広く行われている。
治療の基本は。セラピストとクライエントが治療の場で作り出した人間関係をもとに、相互作用を繰り返しながらクライエントの幸せや自律性、人間的能力の促進を目指す。
治療的変化は、クライエントが治療関係そのものの中で個人的に意義深く、情緒的にも重要な新しい経験をすることによって生じる。そのため、特定技法よりもセラピストとクライエントの関係が重要である。
人間関係(ラポール)
セラピストとクライエントの間に築かれる互いに信頼し合い、安心して感情の交流を行うことができる関係が成立している、心的融和状態。
ロジャーズの理論
セラピストにの基本的な資質として下記が必要である
- 人間関係に感受性を持った人
- 他人の反応をあるがままに観察できる人
その上で、優れたセラピストの本質的な態度として下記を挙げている。
- 客観性
- 個人に対する尊重
- 自己理解
- 心理学的知識
3つの条件
- 自己一致
- 共感的理解
- 無条件の肯定的配慮
「客観的な態度」とは
- 共感能力
- 受容的で誠実な関心をもった態度
- 相手の感情を深く理解する
心理的距離
友達や家族のように慰めたり、同情的に話を聞いたり、重荷を肩代わりしてあげるのは治療的変化ではない。
セラピストは常にクライエントと心理的距離を保ち、付かず離れずの関係をキープする必要がある。相手の事情と自分の感情を混同させないで接することを「共感的理解」と呼ぶ。
スーパービジョン
セラピストが自己理解を深める方法として、自分自身がカウンセリングを受けたり、スーパービジョンを受けると良い。
場面構成(治療構造)
心理療法を円滑に展開していくため、初回面接での場面構成は非常に重視されている。場面構成は下記の通り。
- 相談面接の場所を設定すること
- 相談日時について取り決めをすること
- 相談費用についての情報を提供すること
- 時間の制限をすること
- 相談された内容は一切秘密が保持されること
- 相談を行うことによって得られる一般的な結論を伝達すること
- セラピストの責任を伝達すること
- 相談場面でのクライエントの話題や感情表現は自由であること
心理療法を行う部屋も大事である。
- プライバシーが守られている
- 声が外に漏れず落ち着いた雰囲気で話ができる
時間の制限
1回50分、週1回ペースで行われることが多い。
時間の制限を設けることでクライエントは重要なことを話そうとし、より大きい問題に対決しようとするようになる。
心理療法の流れ(初回面接、中期、終結)
★初回面接
関係の始まりである始まりは重要。
- 不安を抱えるクライエントと信頼関係を形成する
- クライエントの抱える問題についての情報を収集し、変化しようとするクライエントの決意を支援する
- 治療的枠組みを明らかにしてクライエントと治療契約を結ぶ
★中心期
目標に向かって進んでいく時期。
この時期に起こる難しい問題は、
- 継続して来所しながらも面接が中断
- 抵抗や転移が生じる
- クライエントの沈黙にセラピストが不安になる
この時期のクライエントに特徴的な傾向→セラピストとの関係に対する葛藤
- 「信頼したいけど、大きな心理的原因を暴露されるんじゃないか」
- 「先生は鈍感すぎる」
- 「でも感謝もしている」
- 「治療は本当に効果があるのだろうか」
→セラピストはこうした気持ちを見逃さず、的確に受け止めていくことでクライエントの自己理解が深まり、治療関係が発展する。
★終結
一定の目的が達成された時点で終結となる。河合隼雄述べるところの「非常に気持ちのいい終結」の目安は下記。
- 自己実現という観点からみてクライエントの人格に望ましい変化が生じた
- クライエントの抱えていた症状や悩みなど外的な問題についても解決された
- 内的な人格変化と外的な問題解決の関連性がよく了解された
以上3点についてカウンセラーとクライエントが話し合って了解しあい、カウンセリングによってなした仕事の意味が確認できる
具体的なクライエントの変化
- 容姿や服装が自然なものになる
- 落ち着きが見られるようになる
- ありのままの自分を受け入れられるようになる
- 自分以外のものごとや人間に対する見方も現実的で合理的なものになる
- 成長していく人間としての自分に気付き、将来の展望が開けてくる
- クライエントと関わりを持つ人びとの行動も良い方向に変化し始める
※「もしまた必要が生じたら、いつでも来るように」と伝えること
秘密が守られるという補償があるからこそ治療の場で自由に自分の感情を表現し、私的なことも安心して話せる。家族から問い合わせがあっても、本人の了解なくしては教えてはならない。
ただし下記においては例外。