心理療法概説 科目終了試験(6)家族療法の考え方について
心理療法概説 科目終了試験(6)家族療法の考え方について
<ポイント>
- システム
- IP(identified patient)
- 構造派家族療法(サブシステム、再構造化、ジョイニング、マイム)
- 戦略派家族療法(パラドックス、リフレミーング、メタファー)
- 解決志向短期療法(シェイザーらの基本的な考え方、資源、ミラクル・クエスチョン、例外を見つける質問、スケーリング・クエスチョン)
- 家族療法の特徴
<まとめ>
★システム
家族療法は、システム論に基づいた新しい理論的枠組みをもち、個人ではなく家族を一つのシステムとみなしていく心理療法である。
★症状や問題行動の捉え方
→○ 家族システムの病理を反映している(家族システムの病理を反映している家族それ自体が病み、家族のシステムが機能不全に陥ったため、家族の中で最も影響を受けた人が症状として表出する)
→× 問題はクライエント個人にある(従来の心理療法の考え方)
★その他の特徴
- クライエントをIPと呼ぶ(identified patient:家族の中で患者の役割を担う人)
- 治療対象は家族そのもの(個人ではない)
- セラピストは家族システムに変化を生じさせるよう積極的・能動的に介入していく
- 過去にさかのぼって悪者探しをする必要がない(家族の誰も責められるべきではない)
- 治療目的は今困っている具体的な問題の解決
構造派家族療法(サブシステム、再構造化、ジョイニング、マイム)
創始者:ミニューチン
特徴:家族システムの構造に焦点を合わせ、その変化によって家族システムの健全化をはかる。
家族システムの中に形成されている、特有の人間関係のルールに注目する。
- 提携(誰と誰が仲がよい)
- 境界(誰と誰の間に隔たりがある)
- 勢力(誰が誰に対して力を持つか)
★サブシステム
→夫婦、親子、きょうだいなど、家族の一階層下のシステム。サブシステム間の境界線が固いか、明瞭か、曖昧かを判断する。
問題が起きるのはサブシステム間の境界が固い場合と曖昧な場合。
- サブシステム間の境界が固い…交流がない
- サブシステム間の境界が曖昧…友達親子
★再構造化
→機能不全の家族を再構造化
→家族の成員が、自分が置かれている固定化した位置や機能から開放される
→新たな家族システムの資源を活用できるようになる
★再構造化のための技法
- ジョイニング(セラピストが家族の交流にとけ込む)
- マイム(家族の行動を模倣してとけ込みを促進)
- 葛藤誘導(潜在的な家族間の葛藤を顕在化)
戦略派家族療法(パラドックス、リフレミーング、メタファー)
創始者:ヘイリー
特徴:ゲームにルールがあるように、家族にも家族システムのルールがあると考える。病理的な家族システムに、いかにして望ましい変化を起こさせるかの戦略を考える。
★ヘイリーの考え方
- クライエントは犠牲者。個人に問題があるのではない。
- 家族システム自体が病んでいるので、一人がよくなっても他の成員が症状を来すだけ。
- 家族システムには常に関係支配を巡る争いがあり、その産物が精神病理現象。内的葛藤から外的葛藤へと視点を変換することが大切。
★戦略の種類
- パラドックス(症状を出すように指示したり、抑制したりする)
- リフレーミング(クライエントの概念的・情緒的文脈を治療的に有効なものに置き換える。見方が変われば結果も変わる)
- メタファー(起こさせたい行動を抵抗の少ないものから起こさせる)
解決志向短期療法(シェイザーらの基本的な考え方、資源、ミラクル・クエスチョン、例外を見つける質問、スケーリング・クエスチョン)
創始者:ドゥ・シェイザー
特徴:病理や問題点に目を向けて治療や変化を起こさせようとするのでゃなく、直接解決の状態を目指して治療する。「なぜ問題が起きたか」よりも「この問題解決にいま何が使えるか」を重視する。
★シェイザーらの基本的な考え方
- もし、うまくいっているのなら、それを直そうとするな。
- もし、一度うまくいったのなら、またそれをせよ。
- もし、うまくいかないのなら、何か違ったことをせよ。
→クライエントがどうなりたいのかを明確にし、それを実現するために援助していく。
★技法
- ミラクル・クエスチョン(例外を探す質問→クライエントは目標を明確か、肯定的な未来への期待を作れる)
- 例外を見つける質問(今はやめているが、以前は役に立っていたことなど)
- スケーリング・クエスチョン(悪いときを0、理想を10とし、違いを説明することで行動の変化に着目させる)
- コーピング・クエスチョン(クライエントの状況の困難さを受け止めながら悪化を食い止めている何かを探す)